大規模修繕の流れ:計画編
美観の劣化に限らず、設備の機能の低下や漏水など、老朽化による様々な症状が出てきます。
マンションの大規模修繕工事は概ね10年~12年ごとに行なうのが一般的とされています。
ただ環境や維持管理の仕方によって劣化速度は変わりますので専門家による判断が必要になります。
ここでは大規模修繕工事の一般的なすすめ方をご説明します。
管理組合理事会の下部組織として修繕委員会などの専門委員会を作り、資金計画や修繕計画などについて打ち合わせをします。
管理組合の規約によっては理事会が行なう場合もありますが、いずれにしても総会で決められたことを代表で行なう、全マンション居住者の代表者であるということです。
委員だけで実際に何かを『決定』したり、総会で決められていない事柄を行なうということはできません。
同時に理事会や委員会のみに責任がかかるということもありません。
建物診断~劣化診断とも言います。
建物の現在の状況を詳しく調べることです。
これは専門家に依頼することになります。
現況を調べ、修繕の必要な部位や修繕の緊急度の判断などを報告書にしてもらいます。
修繕の仕様書や数量表もまとめてもらい、そこから概算金額を作成してもらいます。
これは見積り合わせをする際の基準になります。
これがないと、様々な会社がそれぞれ独自の数量・仕様で見積を作成することになり比較することが出来なくなってしまいます。
見積を出す全ての会社が一定の決まりに基づいて見積が出来るようにする必要があります。
揃った資料で見積を集める前に、マンションの居住者全員に診断の内容をきちんと正しく知らせなければなりません。
ともすれば委員会にまかせっきりになり、自身の財産のことなのにどこか他人事になってしまう方々も多くいらっしゃるようです。
しかしマンション全体のことは居住者全員の総意で決定する必要があります。
役員だけで進めていったり、また外部の専門家にまかせっきりにしてどのように進んでいるのか居住者に分からない状態にはしないように気をつけます。
後になって理事会と居住者とが対立したりする原因になりかねません。
居住者からは意見を求めて積極的に参加してもらいましょう。
劣化部分の修繕だけでなく、バリアフリーなど時代に合わせた工事もやってほしいという声も出るかも知れません。
見積参加業者の募集方法をいくつか挙げてみます。
1.建通新聞などの業界紙の公募欄への掲載
2.掲示板での広告
3.インターネット上での公募サービス
4.居住者からの推薦等
いずれも、マンション規模や工事期間、参加条件等を明記して会社案内などの資料を送ってもらいます。
見積依頼をするにあたって、現場説明会を開催します。
見積をしてもらう会社に実際にマンションに来てもらい設計図書と見積要領書を配布します。
見積条件の提示をするわけです。
見積期間中に質疑応答を設けて各業者からの質問を受け付けます。
質問の有無にかかわらず、全社へ同じ回答書を配ります。
それらを元に見積書を提出してもらいます。
会社案内や見積書を比較して、更に業者を数社に絞り込み、ヒアリング(プレゼン)を行ないます。
ヒアリングには出来るだけ多くの居住者に参加するよう呼びかけ、各社の工事への取組姿勢や安全対策等を直接話してもらいます。
金額だけでない、各社のカラーが分かります。
質問は事前に決めておき、各社同様に行ないます。
理事会や修繕委員会で話し合い、総合的に判断して選定します。
選定の経緯は、後日総会で説明できるように記録をとっておきます。施工業者が内定したら、その旨の通知を送ります。
また、選定外の業者にも連絡をしておきます。
工事内容・資金計画・施工会社の選定などに関して総会で承認を得たら内定業者と連絡をとり、契約に関する具体的な打ち合わせをします。
契約書には工事場所・工期・工事代金・引渡時期・支払条件などが記載されます。
施工会社から居住者にむけての説明会を開催します。
工事に際しての注意事項の説明をしてもらい、居住者からの質問を受け付けます。
また近隣にお住まいの方々へチラシの配布や挨拶もしてもらい、周知します。分からないことや困ったことがあれば、現場代理人へ。